ぽよ子『公爵令嬢は我が道を場当たり的に行く 3』

 本編終了後の番外編集みたいな感じか。これで終わりなのかな。
 とりあえず、エリザベスがご自慢の「お忍び号DX」を紹介するくだりが好き。外装は普通の乗合馬車だけど、内装を徹底的にレベルアップしたお忍び用馬車。マリーが喜んで乗り込んで、それを解説するエリザベス。そして、ついて行けない殿下とエミリアという構図がw


 あとは、縦ロール様としてよくでてくる、エリザベス主催の茶会で取っ組み合いのケンカをやらかしたアリスト家のご令嬢が、直後に縦ロールを失っていたお話とか。一方、エリザベスは数年かけて縦ロール再現の研究を続けるとかw


 ちょっと物語構造がおもしろいなあ。同作者の「好感度カンスト王子」もそうだけど、転生者がむしろ受動的な立場というのが。いや、エリザベスさんは十分にチートか。いや、彼女の場合、マクナガン家の薫陶の方が大きい気もする。
 この物語の世界から地球に転生した人物が、見知った人々をモデルとしつつ、乙女ゲーム的にキャラを改変してできたのが「夢幻のフラワーガーデン」。で、その乙女ゲーをプレイした人間が、今度は大本の世界のほうに転生して、ゲームを再現しようとしたり、避けようとしたり、聖地巡礼したりする。


 冒頭の「検証! この世界は本当に乙ゲーとは無関係なのか!?」とラストの掌編「夜明け前」が描き下ろしなのかな。
 前者は、「ヒロイン」マリーさんとエリザベスが乙女ゲームと無関係なのか検証するお話。そもそも、キャラが全然違う。王太子は一段ハイスペックで、エリザベス兄はどうしようもないキモシスコンで、他の攻略対象も、マリーさんと出会ってイベントを起こす余地なし。
 後者は、レオンとエリザベスが王位を譲り受ける前夜のお話。


 他には、エリザベスとマリーの同級生エミリアから見た学院生活とその後の人生のお話、縦ロール嬢のその後をアリスト公爵の弟視点で見たお話、エリザベスの兄エルリックが領地を抜け出したのを迎撃するお話、そして、遠くの国の王女さまにして転生者が乙女ゲーの世界をみたいと仕事にかこつけてやってくるお話2編。
 エルリックのヤバさの前に、みんなドン引きw
 お茶会で取っ組み合いのケンカを披露して、その後領地送りになった前アリスト公爵と縦ロール嬢。父親の方は酒浸りになった後、末路も描写されない、相手にされなさっぷりがすごいな。一方、縦ロール嬢は貴族の立場を捨てて、小さな幸せを得る。