第一次世界大戦の各地の戦いを、その前後も含めて地図化している図説本。
第一次世界大戦に至る地理的背景から、バルカン戦線、東部戦線、西部戦線、その他の地域、戦後も続く混乱の状況を表示していく。西部戦線、それなりに戦線は動いているのなとか、東部戦線の激動というか、オーストリアの体たらくというか。第一次世界大戦の震源地となり、第一次世界大戦後も不安定な状況が続いたバルカン半島情勢を、最初に、一章設けたのが、なかなか興味深い。
一方で、書籍の価格を下げるために、作図コストはいろいろと削ったんだろうなあという感じも。4500円と、この手のムック本としては割と高めだけど、この種の図解本としては値段を下げようと努力した感じが。大きな戦況図はともかくとして、小さな地域を描いた地図が情報量が少なすぎて、わざわざ入れる必要があったんかなみたいなのもある。86ページのデルヴィル・ウッドの戦いみたいな。あと、普仏戦闘の地図とか、海戦の移動図とか、矢印だけで、すごくわかりにく図になっている。もうちょっとなんとかならなかったのかね。
というか、海軍関連に関しては、ジュットランド海戦の図のシェーア艦隊の位置がおかしくないかとか、1914年段階の海軍力比較の数字が怪しかったりと、信頼性に難が。日本の戦力がド級戦艦6隻、前ド級戦艦2隻って、おかしすぎるのだが。金剛、比叡が1914年に竣工、実質的には準ド級戦艦の河内型二隻を入れても4隻にしかならないんだよな。かといって、香取型や薩摩型をどう扱うか。前ド級戦艦に至っては、日本海海戦に参加した4四隻に加えて、ロシアからの戦利戦艦が7隻も加わっているのだが、2隻という数字はどこから出てきたのか。
あとは、戦況図の指揮官名がアルファベットだったり、カタカナだったり、日本語校正が行き届いていないところがあるなあとか、部隊マーク内の番号を読もうとする時、青色だと読めない。あと、色覚異常の類いはなかったはずだけど、色の濃淡で勢力関係を分けたり、時系列を表現しようとしているところが、めちゃくちゃ見にくかった。老眼か…
全体としては、第一次世界大戦の全体状況の理解に便利な本。
セルビアに戦争をしかけて、敗走しまくっているオーストリア軍の体たらくとか、大戦中盤東部戦線にリソースを注ぎ込んだドイツ軍、西部戦線では連合軍の攻勢に絶える一方。
あんまり言及されないバルカン半島、イタリア半島、中東戦線がクローズアップされているのが興味深い。トルコの奮戦というか。
あと、イタリア軍の最高司令官、ルイージ・カドルナの評価がめちゃくちゃ厳しくて草。というか、ネット上でも、愚将評価なのか。