魔道技術の発展と、識字率について

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 面白かったので、いまさらながら、いろいろ雑感。


 まず第一に、技術が進歩するという観念そのものが、優れて近代的なものだということが重要。神話やファンタジーでは、過去の黄金時代からだんだん衰退していくと言う世界観の方が主流であることを銘記すべし。実際、歴史的に見ても、進歩した技術が、社会の変動によって消滅するという事例はけっこうある。例えば、北宋時代には華北で石炭を利用した製鉄が行われていたが、これは金、モンゴルの侵入による混乱・人口の移動やそれに伴う組織や需要の消滅によって、継承されなかった。また、アフリカのグレートジンバブエ遺跡なども、政治的凝集性の変動によって継承されなかった技術にあげることができるだろう。
 スレイヤーズの世界も、1000年前の降魔戦争、レティディウス公国の崩壊など、たびたび大規模な混乱に見舞われているようだし、技術が円滑に継承されなかった可能性は高い。
 ちなみに、近代ヨーロッパにおいては「学会」と言うシステムを通じて、科学・技術に関する知見を公開継承するシステムが構築された。これが、ここ何百年かの科学技術の発展を支えている。スレイヤーズ世界の魔導師協会も一定程度近似した組織だが、より秘密主義的な色彩が濃いのではないだろうか。


 攻撃魔法に関して言えば、人間のキャパシティの制約によって、1000年前、レイ・マグヌスの時点で頭打ちの状態にあるのではないか。基本的に人間が使える上限のドラグ・スレイブで、それ以上の進歩はとまっているのでは。ブラスト・ボムやゼラス・ブリッドのように、もはや人間のキャパシティでは発動できないものしか残っていない可能性が高い。リナの場合は、ドーピングでキャパシティをあげているわけだし。人間離れしたキャパシティを持った特殊例しか使えない呪文は、継承されることも少ないだろう。
 あと、あの世界の魔術は、個人的な才能と言うか、適性に支配されている側面がおおきそう。


 そもそも、ファンタジーの世界はわれわれの世界の物理法則や社会システムを移したものとは限らないということ忘れてはいけない。神坂一も、どこかのインタビューで、小説に描かれているものが、必ずしもわれわれの世界と同じものとは限らないと述べている。作中で「チキンのソテー」と書いてあるからと言って、それが必ずしも鶏肉のソテーとは限らないとか。他の物事にも、それは適用されそう。
 あの世界の人間は、ごく一部の極めて戦闘力が高い人間と、その他のせいぜいフレアアローやファイヤー・ボールまでしか使えない人間に分かれていそう。TRPGの『ガープス』にヒーローポイントというシステムがあり、それによって常識はずれの行動が可能になるようになっているが、それと同じようなシステムがスレイヤーズ世界にもありそう。だいたい、ガウリイあたり、剣だけで100人くらいばったばったと切り倒せそうなかんじだし、あれはこの世界の物理法則とは相容れないだろう。ヒーロー時空というか、そんな感じだ。