「バイオトイレ 災害時に役立つおがくず:光が丘パークタウンいちょう通り東第二団地防災委員長市川順子」『朝日新聞』11/2/11

 実際のところ、災害時のトイレの問題と言うのは非常に重要な問題。あの仮設トイレってのは、本当に汚いしな。浦安のように、自宅は無事なのに、上下水道の破損でトイレが使えないってときには、自宅内で維持できるトイレと言うのは便利だろう。
 あと、中越地震の時のエコノミー症候群の話は知っていたが、阪神大震災の時も女性に多くの死者が出ていたというのは始めて知った。トイレの問題が命に直結するという。
 まあ、バイオトイレもそれなりに苦労がありそうだが。

 私は2002年に東京都練馬区の震災ボランティアに応募したことがきっかけで、団地の震災対策に関心を持ちました。現在は団地の中で、249世帯で構成する管理組合の防災委員長として活動を続けています。
 活動を通じて、広域災害時にはトイレが大きな問題になることが分かりました。災害時のトイレは2、3時間も並び、男女の別もなく、汚れていて臭いものです。タンク式の場合は、すぐ満杯になって使えなくなるし、テント式は風でまくれたり、影が映ったりします。トイレットペーパーが床に落ちて汚れて使えない、かぎがかからない、といったこともある。毎回、個室を利用しなければならない女性は、そんなトイレを使うのが非常に苦痛なのです。
 1995年の阪神大震災後、3ヵ月以内に死亡した被災者は、女性が男性より千人多かったのです。04年の新潟県中越地震では、エコノミークラス症候群の死亡者は全員が女性でした。こうしたケースは、トイレに行かずに済むよう飲食を控え、脱水症状や血栓、梗塞につなかったためとみられています。
 この問題は、ずっと取り組むべき問題として対策を求めていましたが、なかなかいい方法が見つかりませんでした。2年ほど前、活動の一環として環境ビジネスの展示会に参加したときに「バイオトイレ」と出合いました。水を使わず、おがくずを材料にスクリューと温度設備、ファンを使って無臭にする装置です。
 バイオトイレメーカーを通じて、森林化学、環境資源学の権威である寺沢実・北海道大名誉教授の話をうかがう機会を得ました。寺沢名誉教授のアドバイスを受けながら実験を続けましたが、おがくずの消臭力は強く、湿気に注意すれば、半永久的に持続することが実感できました。
 衛生的で安価、汚物が目に触れないという利点もあるし、資源の再利用にもなる。夏場では1人1日当たり、2リットルあれば十分です。家庭のトイレは、これでしのぐことができそうです。
 使い方は簡単で、便器やバケツにポリ袋をセットして、排泄のたびにおがくずをひとつかみ投げ込む。臭ってきたら、破裂を防ぐためにゆるく結んで別の容器に移す。備蓄を考慮に入れると、圧縮したおがくずが必要だが、インターネットで探せば手に入れられることが分かりました。
 広域災害時の行政による水道復旧の想定日数は30日と言われています。しかし、それは公道の場合で、私道はさらに長びくでしょう。阪神大震災時の被災者の話を聞いたら、3ヵ月も水道が不通となった地域もあったそうです。
 家庭や地域で災害時のトイレの問題について考え、話し合ってほしいと思います。



関連:
バイオトイレWikipedia
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21世紀のトイレに水はいらない!(前編)