「古木、珍木地域見守る」『熊日新聞』11/1/20

 美里町の古木や珍木の紹介。しかし、見事に一ねじりしてるな…


 たたり話や妖怪話などの伝承の舞台として欠かせない古木。一方で、長い歳月にわたり風雪に耐えた木は、人に癒やしや元気も与えてくれる。山林の多い美里町で古木、珍木を訪ねた。(吉田紳一)


 永富地区の津留川沿いの川岸に、地元で「明水の夫婦杉」と呼ばれる大杉がある。1990年2月には県の「ふるさと熊本の樹木」に登録された。「樹齢は300-400年くらいではないか」と話すのは、地元の松永幸一さん(66)。
 登録当時の幹回りは5.7メートル、高さ31メートル。夫婦なのに1本しかないのは「台風で倒れたと聞いている。子どものころ、倒れた木が橋のように川の向こう岸までとどいていた記憶がある」と松永さん。
 三和地区には、地元で「地の神さん」と親しまれている樹齢300年以上と推定される大杉(町文化財)もある。横に広がる枝ぶりが見事で、昔は子どもたちが枝に登って遊んでいたという。このほか早楠神社(早楠)の杉やタブノキ、山の神・猿田彦祇園の3神を祭る耳取神社(三和)の大きなイチイガシも見事だ。
 一方、畝野地区の緑川ダム湖を見下ろす山中。落ち葉の重なる山道を歩くと、くるりと幹が1回転したヒノキがある。「『何これ? こらすごかバイ』という感じでした」と話すのは地元NPOの廣田孝正さん(45)。2008年ごろ、遊歩道整備のルート調査で見つけたという。
 町内にはこのほか、福城寺(甲佐平)のイチョウやマキ、竹の迫神社(豊富)のイチイガシ、根元に地蔵や石のほこらがある白石野地区のイチイガシや椿地区のモチノキなど、まるで「となりのトトロ」が出てきそうな古木が多くある。
 古木の大きな幹を抱くと、体の中に木の生命力が流れ込んでくるような気にもなる。地域の歴史を何百年と見守り続けてきた古木。敬虔な気持ちで向き合えば、訪れた人にパワーを与えてくれるかもしれない。