藤島弘純『雑草の自然史:染色体から読み解く雑草の秘密』

雑草の自然史ーー染色体から読み解く雑草の秘密

雑草の自然史ーー染色体から読み解く雑草の秘密

 キツネノボタンの近縁種とツユクサの染色体の数と形態の分析から、地域性を確認し、それらがどのように進化してきたのかを明らかにしようとしている。今時だと、直接DNAを解析する方向になるけど、本書のもとになった成果は70-80年代あたりのものだから、そのような手段を取ったのだろうな。どうしても、こう、遺伝学的研究とは言っても、もうひとつ間接的な感じがする。植物の核型や倍数体とDNAはどう関連しているのだろうか。しかしまあ、染色体を染めて、押しつぶして、写真を撮って数えるってのは、ずいぶんと手間がかかりそうだよなあ。あと、中学生レベルの遺伝学の知識を忘れまくっているということが良く分かった。
 キツネノボタンにしろ、ツユクサにしろ、染色体の数や核型と形態の多様性に関係が見られない。キツネノボタンは染色体の分類で地域性が明らかに見られ、かつ核型が違うと互いに繁殖しないと言った所は興味深い。
 最終章は、圃場整備の進展が環境に与える影響の問題を指摘している。水路や畔のコンクリート化などによって、水系などの生態系が分断され、画一化されたものになる。そのような多様性を失った場に、病原体や農薬に耐性がある雑草などが出現すると、猛威を振るうことになると指摘する。ふと気になったのだが、この「圃場整備」って事業は最終的に日本の農業に、どういう影響を与えたのだろうか。本当に生産性が上昇したのか、あるいは設備投資や維持のためのコストがかかる分、損になったのか。自分で調べるのはめんどいな…