国立歴史民俗博物館他編『築何年?:炭素で調べる古建築の年代研究』

 C14年代測定法による古建築の年代測定について紹介するシンポジウムを本にまとめたもの。C14年代測定は、結局、部材の年輪が形成された時期がわかるに過ぎない。このため。建築学的な編年によって、当初建てられた時の材、後の修理で足された材などをきっちり見分ける必要があること。また、木材は製材の過程で一番外側の部分が削られ、年代が古く出ることもあるため、サンプルをどこから採取するかも慎重に考える必要があるそうだ。較正曲線によって複数の年代が推定される場合がある。このため、年輪年代測定と比較して、統計的に答えを出す、ウィグルマッチング法が利用されると。
 建築の様式の編年や修理痕などの検証、C14年代測定などのさまざまな証拠の一致によって、数十年レベルの精度で、年代を決定しているが、仮定による年代決定が二つ寄りかかっているあたり、微妙に危うさを感じるな。
 ラストのコラムの酸素同位体を利用した年代測定や年輪年代測定のコラムも興味深い。酸素同位体を使うアイデアとか、すごいな。あと、年輪年代測定って、どの程度、その検討をできる人がいるのだろうか。ある程度、できる人が増えないと、思い込みで間違っている可能性はあるのではないだろうか。


 後半の具体的な研究事例が興味深い。特に最初の厳島鞆の浦に残る古民家の研究が、こういう風にやるんだという感じで。