かずきふみ『機巧銃と魔導書』

 再読。これは、割と最近の本。
 設計ミスした転移門によって、5つの世界から来訪者が訪れる「第一世界」の国フィーンガルド。異世界からの来訪者は、異能を得てしまうため、異能を悪用した犯罪を取り締まる組織クラウ・ソラスが存在する。そのメンバー、キョウヤとフィヨルの活躍を描く作品。


 しょっぱなに、一人称で出てくるタナカが、ストーカー&下着泥棒で逮捕される展開がおもしろい。おいおいと思ったら、逮捕した側が主人公という。しかも、こいつが悪びれないのが、また、楽しい。


 多くの世界から人がやってきて、異能を目覚めさせ、時には犯罪を起こす姿を、すっと見せたあとは、主人公キョウヤとフィヨルの話。メインはむしろ、フィヨルといった感じだな。第一世界から第六世界までの全ての事象を記録する存在「リア・ファル」。フィヨルは、その情報を引き出すことができる類希な魔術師。それによって、外部からの介入に関わらず記憶を保持でき、全ての人類の行動情報を知ることができる。しかし、異能による変動はリア・ファルにはなぜか記録されず、記録と現実のズレから、異能犯罪を推測することになる。さらに、人間の頭脳の記憶能力の限界によって、引き出せる情報に上限がある。また、情報を引き出すためのリア・ファルとの接触に魔力を消耗するといった制約が、あっさりと犯罪者を捕らえさせない。


 しかし、クラリッサさん、罪な女だなあ。
 異邦人管理局員で流されてきた異邦人と最初に接触するという立場から、つり橋効果は大きいとは思うが、それでもストーカー三匹以上に引っ付かれる。ストーカー殺人が、過去改編でなんども覆される。それを追っかけるうちに、殺人を使嗾する「真犯人」の存在に気付き…


 キョウヤを付け狙う「災厄の30人」の生き残りの存在や家族が虐殺された時に発現したとおぼしき異能がなんなのかとか、いろいろと先に繋がるネタは残してあるようだが、続き出ないのだろうか。