水野良『グランクレスト戦記10:始祖皇帝テオ』

 完結編。
 皇帝聖印の出現を防ごうとする魔法師協会との対決を決意したテオ以下の君主たち。魔法師協会の傀儡であった聖印教会や捕えられていた巨人の王といった切り札、エーラムの巨大な城壁などに拠って、「皇帝軍」に対抗しようとする。しかし、戦慣れした君主たちに対抗できず、城壁への侵入を許し、敗れ去ることに。結局は、没義道な支配のあり方が、内部崩壊を引き起こしてしまったわけか。


 混沌爆発の真相と魔法師協会の「真の使命」が明らかに。先史時代の高度文明は、自らの星を滅ぼしかねない強大なエネルギーと兵器を生み出すに至った。その使用を阻止するために、「混沌」を使用して、自ら文明を崩壊させたのが、混沌爆発の原因だった。そして、秩序に時代に戻り、再び文明が発展し、自らの星を破壊してしまう力を手にすることを防ぐべく、混沌の時代を維持し続けようと、皇帝聖印の出現を阻止し続けてきた。しかし、「終わりの始まり」が気の長い過程すぎて、笑う。


 最終的に、聖印を統合して、大講堂の混沌儀を浄化。秩序の時代を創始したテオは、アレクシスに皇帝の位を譲って、システィナに隠棲する。テオが夢見ていた、故郷の村での穏やかな生活で、エピローグと。
 現実的に考えると、聖印や邪紋が失われたあと、きちんと秩序が出現するのかなあ。なんか、聖印教会のパワーが、ものすごく強くなりそうな気がする。


 最終戦のキーパーソンはプリシラだけど、なんか、使われ方が納得いかないなあ。登場人物が多いせいもあるけど、ほとんど、脇役でクローズアップされないなか、9巻末あたりから、いきなり大活躍。で、最終的に殺害されて、「聖杯」をテオに譲って、テオの地位を磐石にする。便利使いすぎるというか。
 あと、聖印教会とか、聖杯が、ここまでで描写された世界観の中で説明されないのが、どうも、気にかかるというか。