大島明秀『細川侯五代逸話集:幽斎・忠興・忠利・光尚・綱利』

細川侯五代逸話集 ―幽斎・忠興・忠利・光尚・綱利― (熊日新書)

細川侯五代逸話集 ―幽斎・忠興・忠利・光尚・綱利― (熊日新書)

 19世紀に成立した逸話集「随聞録」を現代語訳して、解説を付した本。武辺話の「常山紀談」とは異なり、儒教系の問題意識で編纂されたらしく、「名君」や「忠臣」の話メイン。そういう方向性に問題意識が変わっていくということなのかな。まあ、それでも忠興さんは、DQN四天王の名に恥じない血なまぐささを漂わせるわけだが。
 私自身は漫然と読んだだけだが、読み方によっては政治のあり方の変化が見て取れる、と。幽斎・忠興代には、大名本人がクローズアップされるが、忠利の代では「忠臣」が現れてくる。4年で早死にした光尚は実質的内容がなく、綱利代には本人はほとんど出てこなくなる。幕藩体制の組織が形成されてくる過程が見える、と。


 個人的には、忠興のエピソードが、むしろ江戸幕府と関わりの深いものに偏っているのが気になる。宮廷政治に関心が向いているというか。幕府との信頼関係が深いから、無茶なことができるみたいなエピソードが多い印象。
 あと、忠利代の小野小左衛門のエピソード連続が印象的か。