熊本県立美術館が所有ないし寄託を受けたコレクションの展示会。毎年、手を変え品を変えてやっているもの。第一室が細川家の永青文庫所蔵の調度や絵画など、第二室が今回は今西コレクション、第三室は近代洋画の構成。
第一室
第一室は、例によって永青文庫関係の文物を展示。今回は鎧2領に鞍が3点などで馬具が多め。調度品は鏡や鬢台などの化粧道具、挟み箱に行器。絵画は伝雪舟の大きな屏風絵に狩野常信の「七十二候図」、狩野探信・探雪「手鏡」などの画帖に、領内名勝図巻の球磨川筋が展示。領内名勝図巻以外は撮影禁止。
やはり目立つのは、伝雪舟「四季花鳥図屏風」。展示室の一面が丸ごと埋るでかさ。さまざまな鳥や花が詰め込まれた画面作りで、図案集的な役割もあったのではないかと、解説されていた。雪舟の落款は後からつけられた偽物ではないかという話。つーか、この用紙を採取して、炭素14年代測定やったら、いつの年代が出るんだろう。
「栗色革包紺糸射向威二枚胴具足」。細川斉護佩用ということは、幕末に近い時期か。肉眼で見るとけっこう黒く見えるけど、写真では赤みが強い。これが栗色か。胸の金具が九曜紋。


「黒皺革包紺糸威二枚胴具足」。13代細川韶邦が着用した物。19世紀半ばくらいの制作かな。




「黒漆塗九曜紋鞍」。嘉永五年、星子政之という銘が入っているから、幕末の鞍。星子政之銘の鞍は、ネットで検索すると、岸和田市郷土文化室に収蔵されている鞍がかかるな。著名な職人だったのかね。壬生陣屋の土地を幕府から拝領した際に下賜された鞍らしい。
居木にスレはないけど、後輪の下端あたりは塗りが剥げているな。


「梅樹文蒔絵鞍」。これは、桃山時代の鞍。前輪の梅の花の高蒔絵がきれい。太ももや尻が当たる部分の塗りが摩耗しているから、それなりに使った鞍のようだ。


「角立稲妻文金銀蒔絵鞍」。寛文5(1665)年銘の鞍。


「鉄地桜花紋散銀象嵌鐙」。江戸時代前期の鐙。何度か見たことあるような。

「九曜紋紫羅紗鞍覆」。騎乗していない、馬を引いていくとき、これを鞍の上にかぶせるそうな。

「桜折枝蒔絵柄鏡・鏡箱・鏡立」。柄付の丸い鏡を台に立てかけて使うのか。蒔絵がいいなあ。後の鬢台、お歯黒道具も同じモチーフだからセットなのかね。



「桜折枝蒔絵鬢台」。整髪料などの鬢道具を乗せる台らしい。

「桜織枝蒔絵鉄漿箱」。お歯黒道具を収める箱。銀製の道具が付属。


「九曜紋牡丹唐草蒔絵挟箱」。熊本新田藩主細川利用の娘茂姫が、細川慶前に嫁ぐ際の婚礼調度の可能性がある、と。

「梨子地違鷹羽紋桐唐草蒔絵行器」。浅野家から細川家に嫁いだ益姫の婚礼調度。食べ物を入れて運ぶための旅道具だそうな。

「領内名勝図巻:球磨川筋」。矢野良勝に描かせた領内風景の絵巻。今回描かれたのは球磨川。神瀬岩屋が大きく描かれているけど、国名勝なのね。写真を見ると、なるほどこの絵みたいな感じだな、と。




第二室
今回は「今西コレクションの浮世絵」ということで、今西菊松が蒐集した浮世絵を展示。サラリーマンで収入が限られていた中で、当時比較的安く取引されていた肉筆画をメインに蒐集。結果として、肉筆浮世絵の一大コレクションができあがったという。「美人画」「歌舞伎役者の姿」「戯画や動物たち」「さまざまな画題:風景、歴史上の人物、神々など」と分けて展示。
個人的には江戸時代の美人画はあんまりピンと来ないなあ。むしろ、役者絵のほうが楽しい。
勝川春草「桜花花魁道中図」

葛飾北斎「絵本 潮来絶句」。優れていた分、幕府に目をつけられたと。寛政の改革、ほんとアレだな。残本返却、版木破壊で残る現物が少ないという。

喜多川藤麿「母子採芒図」。黒の鮮やかさが印象的。

初代歌川豊国「松本幸四郎仁木弾正図」。何度か見たことのある絵。五代目松本幸四郎扮する仁木弾正の登場シーンだそうな。かっこいい。

勝川春好「五代目団十郎円窓景清図」。

耳鳥斎「地獄図巻」。職業事に独自の責めが行われる戯画。


磯田湖龍斎「鯉魚図」。

鳥山石燕「旭日猿図」。猿が持っている扇に蟹が描かれていて、猿蟹合戦ですな。

鳥文斎栄之「鶏図」。鮮やか。

初代歌川広重「不二望岳図」。手前の山の脇から、そっと姿を覗かせる富士山という構図がおもしろい。

窪俊満「六歌仙図」。

石田玉山「美人目隠し達磨図」。この達磨さんのエロ親父感が。どう見ても、ご接待されるお店でやに下がってる感じw

葛飾北斎「鍾馗図」。これもちょくちょく見る奴。かっこいい。影のグラデーションがいいなあ。

紫光斎北一「雨乞小町図」。小野小町が和歌を詠んで祈ったところ、たちまち雨が降ったという故事にちなんだ絵。描表装という手法で表装部に龍の絵が描かれているのが印象的。

第三室
「熊本の近代美術と西洋絵画」ということで、近代に入ってからの熊本地域の洋画と19世紀以降の近代フランスをメインにした西洋絵画を展示。今回は、銅版画が多めかな。
写真を撮っていい作品が少なかったので一枚だけ。
宮崎精一「芸人(敗戦)」がなんか印象的。芸人を題材にしているけど、画面が暗く、戦後の姿を描いているのかな。牛島憲之「貝焼場の風景」、海老原喜之助「芸」が好きかな。
熊本近代洋画の後半は抽象画が三点ほど連続。三浦洋一「青の空間」、江田豊「象」、坂本善三「作品79」。
富田至誠「通潤橋」。1928年の作品でセザンヌの影響を受けているという。というか、近代絵画、割と同時代的にフランスあたりの流行を取り入れているなあ。
