越智武臣『近代英国の起源』ミネルヴァ書房 1966(新装版はISBN:4623025012)

近代英国の起源 (MINERVA西洋史ライブラリー)

近代英国の起源 (MINERVA西洋史ライブラリー)

やっと読み終わったー。
おおよそ一週間、これにかかりきりだったのか。文体が古くて非常に難渋した。半世紀も経たないうちに文章というものはこんなに変わるものなのか。
内容自体は研究の進展によって書き換えられているところもあるだろうが、この本に盛られたセンスとでも言うべきものは、意外に古びていない。第1章の政治の風土と言う考え方や個人の動きを重視するところ、第3章の思想の社会史を先取りしたような部分は、今読んでもそう違和感を感じない。はしがきの「近代英国の成立過程といえども、しかくクリア・カットなものではなかった」という言葉は非常に納得のいくものである
本書は近代英国の起点である、清教徒革命の意義を論じたものである。第1章は政治史、第2章は経済史、第3章は思想史と分野ごとに分かれ、おおよそ時代順に並んでいる。
本書を手にとったのは、16世紀イギリスの宮廷について取り上げてあったためである。意外とこの時代の宮廷を取り扱ったものが少ないような気がする。そこで、ちょっと表紙のはずれかかった、この本を借りてきた。この時代の通史にあまり詳しくないこと、基本的に私は清教徒革命に興味がないことから、少し私の興味と外れるが、基本的な情報は得ることができた。
第2章も興味深い。大陸側でも地域史研究の進展にともなって、農地の集積の問題や農村工業の問題が論じられているが、ヨーマン消失の原因として土地保有の法的な基礎が問題であったと指摘されているのは、なるほどと言う感じである。フランスでも地主・貴族による土地集積が進んだが、独立小農民の残存が指摘されている。こちらのほうが法的な部分でより有利であったということか。
また、この章を読んで生じた疑問。16世紀後半以降も毛織物輸出はかなり安定していたが、マーチャント・アドベンチャラーズのアントワープ撤退以後、英国毛織物がどの経路をたどって輸出されたのか。16世紀イギリスの毛織物輸出は大半がロンドンから輸出されたが、それはそこで生産されたのか。そして、ロンドンへの集中の過程で変化があったのか。大陸側でも、イギリスからの毛織物輸出にともなって、生産地域の移動が指摘されるが、イギリス側ではどうだったのか。