伝統技法で茅葺き小屋を建ててみた―『木の家は三百年』実践記 (人間選書)
- 作者: 原田紀子
- 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
- 発売日: 2008/09/01
- メディア: 単行本
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後半は、関わった人々へのインタビュー。大工、左官、茅葺き師といった建築に直接かかわった職人だけでなく、栗材、壁土、和釘、杉材、竹、藁縄、島茅、杉皮、障子紙といった材料の生産者にもインタビューしているのが興味深い。今のような、工業的な木材が求められる時代にも、栗材を供給しつづける人や壁土の生産方法、藁縄生産の現況などなど。壁土って、洪水堆積物を専用に使っているんだな。現在も粘り強く供給する人々がいるが、なんか先細り感はあるなあ。次世代に引き継ぐのが難しそうな感じ。伝統技術って、それを作る職人よりも先に、技術を支える材料や工具の方が先に無くなっちゃうものなのかもな。
しかし、こういう伝統的な民家を模型で再現するための参考のために借りたのだが、その部分はあんまりって感じだ。
メモ:
この附近の山村の経済構造っていうんですか、生活を見てみますと、まず林業と薪炭業あと養蚕。この三つで成り立っていたんです。よく考えるとうまく出来ていて、超長期にわたる林業と、十五年から二十年ぐらいで換金できる薪炭業。それで養蚕は毎年収入があると。そういう長期的なもの、中期的なもの、短期的なものの複合経営で成り立っていたのが山村経済だった。それが戦後、科学技術の進歩で化学繊維が出来、養蚕が駄目になり、次にガス、灯油が出て薪、炭が駄目になった。戦後の復興期の住宅ラッシュが続いて木材の価格が上がって林業だけは成り立っていた。長い歴史の中で林業が単独で成り立っていいたのは本当に戦後のその一時だけだったんですよ。p.110
他にも運送なんかもあったと思うが。しかし、林業だけで山村経済を維持するというのは、確かに難しいのかもしれないな。