田中芳樹『纐纈城綺譚』

纐纈城綺譚

纐纈城綺譚

 まあ、普通にサクサクと楽しく読んだ本。
 「宇治拾遺物語」に収録された、円仁が道に迷って、人間の生き血を絞って布を染める城に迷い込んだ説話を膨らませた話。円仁の説話は、ある意味、良くある、旅人が道に迷って一夜の宿を乞うたら、そこが恐ろしい場所でしたという物語。それを、いかにも田中芳樹的な、バトル物に膨らませている。
 円仁からの知らせを受けた武侠が、晩唐宣宗の時代を舞台に、裏で暗躍する敵を相手に戦う。こういうの、ある程度、正体が明らかになってくると、敵に魅力がなくなるんだよな。つーか、李績あたりの活躍が物足りない感が。あと、辛兄の名前がパソコンでは書きにくい。