「多国籍企業の穀物確保:“農地収奪”世界で拡大:補償なく泣き寝入り:日本の開発計画にも警戒感」『熊日新聞』14/10/7

 所有権が曖昧な土地を、「無主地」とみなして、力ずくで開発するって、典型的な「帝国主義」的開発だな。慣行的な利用権を尊重するのは、当然のこと。その上で、権利をはっきりさせる必要があるのに。
 19世紀に逆行しつつあるな、世界は。


 日本の「プロサバンナ」計画が警戒されるのも当然としか言いようがない。生産コストが上昇して、剥きだしの価格変動にさらされることになるんだから。ボトムアップの開発計画ならともかく、これだと一般の農民は、農業労働者になるだけだろう。
 そもそも、日本のODAによる支援が、地元の社会を破壊とか、前例はいくらでもあるし。


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 多国籍企業穀物を確保するため、世界中で農地を取得する動きが広がっている。きっかけは穀物価格高騰による2007〜08年の食料危機。地元の小規模農家が立ち退きを迫られ「農地の収奪だ」と反発するケースが起きており、日本がアフリカで推進する農業開発にも警戒感が根強い。




 稲の収穫を終えた田んぼが辺り一面に広がっていた。アフリカ南部モザンビークの首都マプトから約150キロ北東のシャイシャイ。かつて約280人の農民がトマトやジャガイモを栽培していた土地の面影はない。


 「突然」の整地
 「本当に突然だった」。中国系企業が農民のクララ・ルイスさん(54)らの畑を重機で整地し始めたのは6年前。慌てて抗議したが「政府が許可した」の一点張りだった。地元政府に訴えても取り合ってもらえず、何の補償もないまま中国系企業が稲の栽培を始めた。
 モザンビークの土地はすべて国有地で、農民に所有権はない。それでも企業は長年耕作してきた農民と補償などを話し合う義務があるが、弱い立場の農民が泣き寝入りしている場合が多い。
 ルイスさん一家は小さな農地の収穫物だけで生計を立てていた。今は他の農家を手伝い、収入は1日約1ドル(約109円)。生活は苦しい。「外国企業は自分の国に土地があるじゃないか。私たちには何も残されてない」と怒りをぶちまけた。


 アジアでも
 国連機関や非政府組織(NGO)でつくる「国際土地連合」によると、こうした土地取引は、欧米やアジアの企業により世界で00年から10年までに約2億ヘクタールに上り、85%以上がアフリカやアジアに集中している。ほとんどはバイオ燃料や食料として消費される輸出用穀物の生産が目的だ。
 発展途上国では土地の権利関係があいまいで、地元住民が利用する農地を企業が空き地とみなして所有権や使用権を取得。貧しい農民から自給自足の糧を奪っているとカンボジアやフィリピンでも問題視されている。
 世界銀行が10年に発表した報告書は、大規模な農地拡張が貧困削減に貢献する可能性に注目する一方、開発計画や補償に関する情報が農民らに十分に提供されなければ「(農地収奪などの)大きな危険が生じる」と警告した。


 議論かみ合わず
 モザンビーク北部では日本とブラジルが協力して大規模農業開発計画「プロサバンナ」を推進。在マプト日本大使館の丸橋次郎参事官は「目的は農民の生活向上で穀物輸出ではない」と訴える。
 しかし、農民組織「全国農民連盟(UNAC)」のアウグスト・マフィゴ代表は「他地域の農民が苦しむのを見てきた。同じことが起きる」と不信感をあらわにする。
 農民らを支援するNGOの関係者は「各国政府や企業は開発の重要性を訴えるが、農民は今の暮らしを変えたくないと思っていて議論がかみ合わない」と指摘した。(マプト共同=稲葉俊之)