「歴史読本」編集部『日本の名家・名門人脈』

日本の名家・名門人脈

日本の名家・名門人脈

 政治家や文化人の系図を追った本。
 学術文化系の職業の人と、政治家や官僚軍人の距離が近いのが興味深い。高等教育の機会とか、高等教育を受けさせるインセンティブといった「文化資本」が重要なのかね。
 こうして見ると、「文学」って、独創性や創造性が重要なのではなくて、文壇活動や人脈が重要なんだな。実際、本書に出てくる人物を調べると、大体東京で生まれ育ち、東京の大学を卒業しているんだよな。文化の流通評価機能が、東京にまとまりすぎている。
 あと、役者が多く出てくるのもおもしろい。演劇と大学生の距離の近さとでも言ったらいいのかね。近代の演劇運動が、文学や大学と近しかったとも言い換えることができるか。
 音楽にしろ、芸能活動にしろ、実家に余裕があれば、チャレンジしやすいしな。


 華族華族で互いに通婚しているとか、薩長閥は互いに親類関係を結んでいるんだなとか。系図を見ていると、血縁関係の持つパワーが浮かび上がってくるな。
 伊藤博文大久保利通木戸孝允の子孫は、戦前には宮内庁や宮廷がらみの役職についているが、やはり何らかの「信頼」があったのだろうか。


 ラストの天皇家系図見ると、大正天皇の曾孫世代以降、女性ばかりなのがすごいな。あと、男性皇族に意外と子供が少ないのも印象的。何らかのブレーキがあったのか、単純につりあう相手を見つけられなかったのか、晩婚化の傾向でもあったのか。


 具体例で興味深いのいくつか。
 講談社の野間家が軍人家系との縁組が多いのが印象的。剣道とのからみなのだろうか。そして、片っ端から婿養子なのが。
 515事件で殺害された犬養毅の子孫が共同通信の社長やったり、文筆家になったり。
 オノ・ヨーコの家系もすごい。
 武豊武家西郷隆盛と血縁だったり、一族に多数の騎手を輩出している。あとは、幸田露伴の親類とか、鶴見良行の家系とか。


 ところによっては、かなり遠縁な関係を無理やり結び付けている感もあるが…