日垣隆『知的ストレッチ入門:すいすい読める 書ける アイデアが出る』

知的ストレッチ入門―すいすい読める書けるアイデアが出る (新潮文庫)

知的ストレッチ入門―すいすい読める書けるアイデアが出る (新潮文庫)

 うーん、前半はともかくとして、後半は完全に自分語りとなってしまっているような。ハウツー本としては、不徹底感が強い。あと、1対1のアウトプットって、作る側の生産性は高いけど、消費者からすると、ぬるい本を読まされることになるから、あまりありがたくない話。
 全体は、読書、書斎術、検証術、仕事術、文章術、疑う、互助術、変わる、決断といった構成。4章の仕事術あたりまでは、割と実用的なアドバイスが多いが、それ以降は、あまり参考にならないような。「文章術」で、ブログの話をしてどうするのだろうか。「疑う」のところも、なんか底が浅い。


 第2章の書斎関係、第3章の具体的なレファ本利用の部分なんかは、結構参考になる。
 本の99パーセントは奥行き15センチ以内というのは、全くその通りで、効率的な利用を考えると、30センチ近い奥行きがある一般に売っている棚は使い物にならないんだよな。「ロング書棚」ないし「ロング本棚」という商品名のものが良いと。あとは、クリアチェストの利用とか。吉川国工業製「like-it MEDIX A4ファイルユニット」が書類整理用に推薦されている。あとは、自宅にコピー機は必須とか。
 第3章は考えるということで、レファ本を使ったチェック、メモの取り方、「設問が重要」とか。メモを細かく取っておくと役に立つ。デジタルへの一元化は無駄というのは、人にもよるだろうけど。メモの整理は「山根式」。人が読まないような本が、重層的に物事を見るのに役立つ。あるいは、「どういう問いを設定するか」が知的活動の根本と。


 あとは、読書のところの付箋の貼り方とか。仕事術のところのちゃんと終わらせることが大事。読書会の効果。このあたりは、なるほど感が。
 本書は2010年の刊行だけど、このころはツイッターは牧歌的だったのだな。「炎上が生まれにくい構造になっています(p.220)」とあるが、今や、炎上は日常茶飯事といった感じだけど。まあ、作者と読者のフラットな人間関係をうまく構築している人もいるんだろうし、要は使いかたなんだろうけど。