新井孝重『戦争の日本史7 蒙古襲来』 - 紙屋研究所

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 だいたい、三テーマ。元寇防塁に関わって、船、対外思想、史跡の保全利用の話。
 最初の対外遠征に充当できる大型軍船がなかったのではないかというのは、ありそうな話。比較的小型の準構造船がメインで、小規模な略奪作戦は可能でも、まとまった兵力を派遣するのは難しかった。ありえそう。ただ、博多商人の協力を得れば、建造はできなくもなかったんじゃなかろうか。
 遣唐使船の船も、それほど頑丈な船じゃなかった気配があるしなあ。
 二番目は、海外への認識のゆがみ。当時、外交の姿勢が不思議なほど見られないと。確かに、それは言えそう。ただ、江南軍は、移民団ないし二線級警備部隊といった位置づけのようだから、軍事的には、鎌倉幕府は圧倒できていたと考えて良さそうなのだが。文永の役でも、最近は互角に戦っていたという意見が出てきているし。
 逆に、「神国思想」が根っこがないところから出てきたのが怖い。


 ラストは元寇防塁の「活用」。海岸線が後退して、いまや町中だから、「活用」というのも大変そうだけど。まあ、自治体の首長は、たいがい金になる「観光資源」にしか興味ないよ。