飯沼賢司『環境歴史学とはなにか』読了

環境歴史学とはなにか (日本史リブレット)

環境歴史学とはなにか (日本史リブレット)


うーん、どうしても水田と水利機構に偏重しすぎだと感じる。
水田と水利機構は、大規模な造成・維持システムが必要で、それだけに各種の情報を得やすい。さらに、稲の社会全般にわたる重要性を考えれば、そこに興味が行くのは仕方がないとは思う。
しかし、人間集団が再生産をしていくためには、穀類だけではなく、必須アミノ酸たんぱく質、塩、衣類、住居、生産用具・炊事道具としての金属器・陶器など、それこそいろいろなものが必要になる。それらも、モノによっては痕跡に残りにくいかもしれないが、環境に規制され、逆に規制するものとして、無視することは許されないと思うのだが。


逆に、興味深かったのは、第二章の周囲の環境と、信仰・世界観・自然の認識の相互作用を扱った部分。「ホタルからみた里山の成立」の自然は奈良時代以前には征服する対象であったが、平安時代には里山が成立し、愛でる存在・恵みをもたらす存在と認識されるようになったという主張は、その当否はともかく、おもしろい。


個人的には、巻末の参考文献が一番役に立ちそう。