藤岡換太郎『山はどうしてできるのか:ダイナミックな地球科学入門』

山はどうしてできるのか―ダイナミックな地球科学入門 (ブルーバックス)

山はどうしてできるのか―ダイナミックな地球科学入門 (ブルーバックス)

 各種の山の成因について、プレートテクトニクスを元に分かりやすく解説している。登山になぞらえて、各章が○合目とされているのも、ちょっと楽しい。
 二合目の山の高さの話が興味深い。だいたいはジオイドや平均海面からの高さで論じられるが、地球の中心からの距離ではかるやり方もあるそうだ。その場合、地球の形が回転楕円体なので、赤道に近い山ほど高くなるという。
 三合目から四合目は、山岳形成理論の歴史。ダーウィンの時代あたりから、地向斜理論、ウェゲナーの大陸移動説、さらに各地の地磁気の変化の違いや海洋底の縞状の地磁気異常から、海洋底拡大説への展開が紹介される。地向斜理論のあの図は、古い図鑑かなんかで見たことあるな。ピンと来なかったが。ウェゲナーもあと20年生きたなら、栄誉に包まれただろうな。あと、プレートテクトニクス理論が一般化した後しか知らないからびっくりするけど、プレートテクトニクス理論って意外と最近受け入れられたものなんだよな。
 五合目はプレートテクトニクスの解説。オマーンの古い海洋プレートの断面が見られるオフィライトが興味深い。あと、プルームテクトニクスの解説など。
 ここから後の後半は、カテゴリー別に山の形成を。六合目は、プレート運動によって形成される山地の紹介。断層運動によって形成される山地として京都の東山や六甲山を、付加体による山地形成、ヒマラヤのような大陸の衝突によって形成される巨大山脈など。大陸は、小規模な陸塊が寄せ集まって造られたとか、アイソスタシーが山地に与える影響なども。
 七合目は火山。プレートが沈み込む場所では、沈み込んだプレートが含む水が、圧力によって放出されるため、マグマが形成され、火山フロントを形作る。日本の中央部から日本海側に火山が多いのは、その理由による。一方で、ハワイなど地下深くから溶岩が供給されるホットスポットでは、プレートの移動にともなって列状に海山や島が形成される。あるいは、プルーム上昇による巨大な海台の存在。大規模な噴火活動が行われている最中って、地球の環境はどうなっているんだろうな。
 八合目は、花崗岩・蛇紋岩・石灰岩の山の話。花崗岩は比較的軽いので、表層近くに浮き上がり、巨大な山塊を造ると。100キロ平方メートルを超えるような巨大な花崗岩の塊をバソリスと呼ぶそうで、ネバダバソリスやコーストレインジバソリスなどの巨大なものがあるそうな。流紋岩は、比較的温度が低いマントル中ででかんらん岩と水が反応、蛇紋岩マグマを形成、これまた軽くなるので浮き上がってくると。最後の石灰岩は、海洋プレートの島嶼周囲に形成されたサンゴ礁が、付加体としてくっつくことで形成される。
 プレート沈み込み帯だからこその、さまざまな山の形成と。