- 作者: 柴辻俊六
- 出版社/メーカー: 戎光祥出版
- 発売日: 2017/05/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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図書館の返却期限が迫ってきたので、慌てて読了。ここしばらく、マンガと雑誌ばかりだったので、普通の本は久しぶりのような。
なんか、いまいち雑多な雰囲気だなと思ったが、あちこちに書いた古文書関係の文章を大規模に加筆修正してできた本だそうで。図版が豊富なので、ある程度読める人は勉強になるのではなかろうか。私は、戦国の字体が、ものすごく苦手で…
後世としては、第1章が古文書の性質について、第2章が調査の事前準備、第3章が調査の実際。最後の4章が偽文書をはじめとする、調査に関わるさまざまなこと。5章は、さまざまな研究。
公的機関でも、所定の手続きが必要で、民間に所蔵されている文書はさらにアプローチが難しい。地元で詳しい人に仲介をしてもらうのが確実。あと、雑談力も重要。事前の準備の必要性。
あとは、調査をしたら、元に戻すことが大事と。ここを適当にやると、後々の人の迷惑になる。文書を元通りの折りかたで戻すのは当然、史料を取り出すときの状況になるべく近い形で戻す必要がある。
第3章の調査の実際が、やはりおもしろい。山梨での調査、都内の文書調査、竜雲寺文書の調査と寺史編纂の経験、沼津地域の史料調査の話など。近世文書と混ざってしまっていることが多いので気をつける。目録は、効率が悪くても、各人に振り分けないほうが良い。史料の流出事例など。竜雲寺の寺史編纂の話は、研究のやり方の紹介として興味深い。
明らかに、現地での史料調査などできないレベルの人間には、第4章がおもしろいかな。文書の原本だけではなく、草稿たる案文や副本。後に作られたさまざまな写しや複製類。様式や用紙、歴史事実の突き合せで、真偽を見分けなければならない。
偽文書は有名人に寄せて多く作られる。あるいは、さまざまな自分の立場を有利にするための偽造など。川中島合戦の感状に偽文書が多いというのがおもしろい。武田側では、信玄が負けと認識していたためか、ほとんど感状は出されていない。しかし、幕臣となった武田旧臣が、家の由緒を誇示するために、偽作したと。動機として、非常に分かりやすい。精巧なものから、杜撰なものまで、いろいろあると。
第5章は、姓氏と地名の関係、偽系図と系図買い、副状研究の紹介。