『milsil』Vol.10No.6、2017

 特集は「博物館とコレクション」ということで、自然史系と理工系の博物館におけるコレクションの意義を紹介する。自然史は、標本の蓄積によって、採集時にはできなかった分析方法や問題意識による調査を、遡及して可能にする意義がある。理工系は、技術や学説が生み出されてきた歴史的文脈を保存する意義がある、と。
 個別のコレクションの紹介も興味深い。日本産の鉱物を網羅した「櫻井鉱物コレクション」、これだけの規模のコレクションを整理する手間が、どれだけかかったのだろうな、と。他に、ハネカクシ類のスメタナ・コレクション、トンボの朝比奈コレクション、有孔虫の池谷コレクション、直良信夫コレクションなどが紹介される。池谷コレクションは、特定の時期の有孔虫の比率を示しすため、大きな変動があったときなどの比較に使える。直良コレクションは、動物化石を年代測定して、動物の時系列変化を調査できる。新たな目で、利用できる。また、最近は地衣類の上に好んで生育する地衣生菌の存在がわかり、過去の標本から新たな種が発見されているそうだ。過去の蓄積の大切さ。
 続いては、文化財レスキュー。東日本大震災で行われた鯨と海の科学館の藻類標本のレスキュー、8万点中1万点の回収に成功。津波に耐えられる収蔵庫というのは、確かに現実的ではないわなあ。あるいは、水害を受けた球磨村エジソンミュージアム森林館からのコレクションの引き取りとか。引取りには、コストがかかると。栽培されている植物という「リビングコレクション」の維持のためのネットワークの話も興味深い。
 今後、どうなっていくかと言う話で、古人骨などは、洗浄以前に試料が採取される白保人骨の事例などが興味深い。あとは、データベースの共通化の話など。