講演「熊本県立図書館保管漢籍細川文庫について」

 本日は、県立図書館の講演、高橋智氏の「熊本県立図書館保管漢籍細川文庫について」を聴きにに出かける。思ったより、出かける時間が遅くなって、昼食を食い損なう。まあ、最近、昼はかなり遅く食べているのだけど。
 そういえば、県立図書館の隣の熊本市総合体育館、やたらと車が止まっていたけど、今日は何があったんだろう。予定表を見るに、スフトテニスの大会が行われていたようだが。帰りには、歩道いっぱいに、ぞろぞろと市電の駅に歩いていて、びっくりした。
 帰ったら、めちゃくちゃ痛い頭痛に悩まされる。久しぶりに偏頭痛っぽいけど、夕方起きるってことは、緊張性頭痛っぽくもあるし…


 本題の講演の話。
 タイトルの通り、熊本県立図書館に寄託された細川家旧蔵の漢籍について。企画展「武士の教科書」に関連したもの。
 講師の方は、かっちりとしたストーリーを組み立てないで講演をやるタイプの方のようだが、ちょっと今回は、ペース配分が良くなかったように思える。具体的には、導入に長くかかりすぎた感が。
 あとは、「資料群」としての評価も欲しかったが、こっちは、『北岡文庫漢籍目録』を読んだ方が良いのかな。


 明経道の家で養われ、清原家の漢学を身につけた初代の細川藤孝。そして、時習館を創設した重賢といった細川家の漢学の伝統。時習館の漢学の伝統は、その後、近代に入り藩校が解散した後も、東大・京大などの研究機関に時習館出身者が教員として入り込んだことにより、受け継がれたという話が興味深い。


 県立図書館に寄託された北岡文庫漢籍は、細川家の文庫に蓄積された漢籍に、時習館の蔵書が混ざったもの。時習館蔵書は、近代に入り、時習館が解散し、書物が売却された後に、再収集されたものかもしれない、と。
 また、時習館は、中国で作成されたテクストである、「唐本」を大量に買っている。この種の輸入書籍は高価だったが、大名家は買いあさった。長崎に持ち込まれた書籍の目録が残されているそうだが、大量に船積みされてきていた。
 細川家本体で収集された本がメインだけに、細川重賢のお手持ち本やそれ以降の当主の書物が残る。


 集められた書物の来歴を語るのが蔵書印。細川文庫、細川家蔵、北岡文庫、時習館記録方、時習館図書之印記、銀台文庫、銀台副本といった印が残る。
 特に、細川重賢の蔵書印は、大きいものが、ドカンと右上に押されているが、印鑑を彫った人もかなりの人物のようだし、そもそも、大きな印鑑は高価な印肉を、大量に使えるという点で、贅沢である。


 また、大名家の文庫だけに、書籍の質が高いことも特色。
 版木を彫って最初に印刷した「初印本」が非常に多く、書店が真っ先に売りに来たか、献上したか。あと、殿様用の「上装本」も多い。


 重賢の書き入れが圧巻。内容に関するノートや会読の記録などが残される。ほかの大名は、書物に書き入れをしない。よほど、自分の学問に自信があったのではないかという。まあ、間違いがガンガン記録に残っちゃったら、そりゃ、恥だしなあ。


 あとは、印記から、著者による献本や大名間の本の贈答が見える。
 後者としては、大給松平家の美濃岩村藩岩村学問所の印のある書物が伝来している。